相談者:1級建築士事務所 代表
私の会社は、1級建築士事務所です。今後の業務の拡大を目指して、特定建設業許可の取得を検討しています。ネットを検索していたところ、貴法人のホームページにたどり着きました。建設業許可取得の実績が豊富なようですが、弊社のような1級建築士事務所でも、特定建設業許可を取得することはできるのでしょうか?ちなみに、会社の場所は、東京都内です。
回答者:行政書士
特定建設業許可を取得したいのですね。弊所は「1級建築士事務所登録と特定建設業許可取得」を同時で申請した実績もあります。また、特定建設業許可取得は、弊所の大変得意とする申請手続きです。まずは、御社のような1級の建築士事務所が、特定建設業許可を取得する際に大事な要件について、わかりやすく、ご回答させて頂きます。
✅ 設計だけでなく施工まで管理して、品質やコストをコントロールしていく
✅ 顧客からの要望に応じた柔軟な対応が可能になり、価値の高いサービスを提供できる
✅ デザインにこだわった設計の意図を正しく反映できるよう施工部門を持ちたい
✅ 設計だけでなく施工も請け負うことで、工事利益を確保し、利益率を向上させたい
✅ 富裕層を中心に、設計と施工を一括で依頼したいというニーズが増えている
という理由で、特定建設業許可の取得を目指している1級建築士事務所からのご相談です。
上記の他にも「特定建設業許可を取得することによって、大規模プロジェクトに参入しやすくなる」「大規模工事を受注できるとビジネスの幅が広がる」「大手との取引では特定建設業許可が求められることが多い」ということも、特定建設業許可を取得する必要性として挙げられることができます。
しかし、一方で、建設業許可は誰でも簡単に取れるものではありません。とりわけ、「特定」建設業許可となると、「技術者」だけでなく「財産的要件」および「経営業務管理責任者」が必要になってきます。そこで、このページでは、特定建設業許可を取得したいとお考えの1級建築士事務所が、どのような点に気を付けるべきかについて、解説をしていきたいと思います。
1級建築士事務所が特定建設業許可を取得するための要件
前提として建設業許可を取得するには、「経営業務管理責任者」「専任の技術者」が必要です。そして、特定建設業許可を取得するには「専任の技術者」は「1級の資格者」である必要があり、かつ「財産的要件」を満たしている必要があります。そこで、まずは、「専任の技術者(1級の資格者)」「財産的要件」「経営業務管理責任者」の順番に、1級建築士事務所が特定建設業許可を取得するための要件について、詳しく見ていきます。
専任の技術者(1級の資格者)
まず、特定建設業許可を取得するには「専任の技術者」として「1級の資格者」が常勤していることが必要です。1級建築士事務所の場合、1級建築士が常勤していることと思います。逆に1級建築士が常勤していなければ1級建築士事務所の登録をすることができないわけですから、「専任の技術者(1級の資格者)」の要件は、1級建築士事務所であれば、当然に満たしているはずです。
よって、御社が1級建築士事務所である場合、特定建設業許可を取得するための「専任の技術者(1級の資格者)」の要件については、問題なくクリアできます。なお、1級建築士が専任技術者となることによって、取得が可能な特定建設業許可の業種は以下の6業種になります。
- 建築一式工事
- 大工工事
- 屋根工事
- タイル工事
- 鋼構造物工事
- 内装工事
財産的要件について
特定建設業許可を取得するには、以下の財産的要件を満たしている必要があります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
このうち「1.欠損比率」「2.流動比率」「4.自己資本額」の3つについては、直近の確定した決算の財務諸表(貸借対照表)で満たしていることを確認します。「3.資本金の額」のみ、直近の確定した決算時点で満たしていなくても申請時点で満たしていれば大丈夫です。たとえば、御社の資本金が1,000万円、自己資本額が3,000万円であった場合、1,000万円を増資することによって、「3.資本金の額が2,000万円以上あること」「4.自己資本の額が4,000万円以上であること」の条件を満たすことができます。
経営業務管理責任者について
1級建築士事務所が特定建設業許可を取得するうえで、一番ネックになってくるのが「経営業務管理責任者」の要件です。「経営業務管理責任者」とは、建設業許可業者における建設業部門の最高責任者のことを言います。代表取締役が経営業務管理責任者になることが多いですが、必ずしも代表取締役である必要はなく、代表権のない取締役でも「常勤」であれば、経営業務管理責任者になることができます。
建設業は「完成までの工期が長い」「1件当たりの施工金額が高い」「事故が起きやすい」「多重下請構造になりがち」というような特殊な業界です。そのため、建設業許可を取得するにあたっては、「過去の経営経験」を重視し、「経営業務管理責任者」の要件を満たしている会社でない限り、建設業許可を取得することができない建前になっています。
この経営業務管理責任者になるには、以下の(ア)(イ)(ウ)の3つの条件の全てを満たしている必要があります。
(ア)申請会社の常勤の取締役であること
(イ)取締役としての5年以上の経験があること
(ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと
以下、3つの条件について詳しく解説していきます。
(ア)申請会社の常勤の取締役であること
経営業務管理責任者は申請会社の「常勤」の「取締役」であることが必要です。「非常勤」の取締役では、経営業務管理責任者になることができません。また、「部長」や「係長」といった役職だと、経営業務管理責任者になることができません。原則として登記されている「取締役」であることが必要です。
(イ)取締役としての5年以上の経験があること
経営業務管理責任者になるには、取締役(もしくは個人事業主)としての経験が5年以上必要です。「取締役としての経験が3年しかない」というケースにおいては、個人事業主としての経験があるような特殊な場合を除いて、経営業務管理責任者になることができません。
(ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと
(イ)の取締役としての5年以上の経験は、建設業をおこなっていたことの経験である必要があります。残念ながら建築士事務所における「設計の経験」は、「建設業をおこなっていたこと」には該当しません。(ウ)の「建設業をおこなっていたこと」に該当するには、建設工事の請負・施工を行っていたことが必要になります。
ネックになるのは「経営業務管理責任者」の要件
ここまでお読みいただいて分かるように、1級建築士事務所が特定建設業許可を取得する際に、ネックになるのは「経営業務管理責任者」の要件です。
- 「専任の技術者」(1級の資格者)⇒1級建築士が常勤
- 財産的要件⇒次回の決算まで増資などの対策を行う
ということで、各要件をクリアすることができます。しかし、経営業務管理責任者においては、過去5年間に渡って「工事の実績(建設業をおこなっていたこと)」が必要になるため、工事実績がなければ証明が難しいのが現状です。それでは、特定建設業許可の取得を、まったくあきらめなければならないのか?というとそうでもありません。
少しでも工事の実績がある場合
「少額でも」「件数が少なくても」工事の実績がある場合には、経営業務管理責任者の(ウ)の条件を満たす可能性があります。東京都の場合、「(ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと」を証明するには、
- 工事請負契約書
- 工事の注文書
- 工事の請求書+入金記録
のいずれかを3か月に1件の割合で提出する必要があります。仮に、年間数件でも工事を施工していた実績があれば、「3か月1件の割合で工事請負契約書などの書類を提出する」ことができる場合もあるはずです。「工事請負契約書」がなければ「注文書」、「注文書」がなければ「請求書+入金記録」で、3か月に1件の割合で工事実績を証明できれば良いわけですから、そこまでハードルが高いようには思わないのですが、いかがでしょうか?
まったく工事実績がない場合
建築士事務所として「建築設計」は行ってきたものの、「工事の請負施工」をまったく行ってきてない場合、つまり、工事実績が全くのゼロの場合でも、経営業務管理責任者の要件を満たしている人を取締役に招き入れることによって、特定建設業許可を取得することができます。この場合は、外部から取締役を招聘することになります。常勤の取締役として登用し、社会保険への加入手続きを行い、かつ、登記簿謄本の取締役就任登記を行うことによって、経営業務管理責任者の条件である(ア)(イ)(ウ)を満たすことになり、特定建設業許可を取得することができるようになります。
知り合いを頼ってみるのはもちろんですが、「ハイクラス人材紹介会社」や「経営幹部派遣会社」といった経営層や役員クラスの採用支援を行っている会社のサポートを受けるのも1つの手段であるように思います。
特定建設業許可取得でお困りの1級建築士事務所さまへ
行政書士
「建築士事務所の登録」「特定建設業許可の取得」は、いずれも弊所が大変得意としている手続きです。「建築士事務所の登録」が自社でできたとしても「特定建設業許可の取得」は、なかなか難しいかもしれません。特に経営業務管理責任者の要件の証明は、行政書士としての経験値が大いにモノをいう作業です。
特定建設業許可を取得したいとお考えの1級建築士事務所のみんさまに向けて、記載してきましたが、記載内容はおおむねご理解いただけましたでしょうか?
✅ デザインのこだわりを施工段階にも反映させたい
✅ クライアントの希望で設計と施工を一括して受注したい
✅ 工事部門を新たに立ち上げ、自社で施工までを管理したい
というお話をよく聞きます。そういった建築士事務所の人には、ぜひ、特定建設業許可を取得して、ブランド力の強化やクライアントからの信頼確保に取り組んで欲しいと思っています。
とはいうものの、経営業務管理責任者の要件は、建設業許可を取得するための独特の要件で、他の許認可にはないものです。また、取締役としての5年間、工事の実績を証明しなければ、経営業務管理責任者になることができないという、とても高いハードルがあります。
行政書士法人スマートサイドは、これまでたくさんの会社の特定建設業許可の取得をサポートしてきました。1級建築士事務所のケースもありましたし、取締役を外部から招聘してきたケースもあります。経営業務管理責任者の要件証明について、過去の申請実績や最新の動向を考慮して、御社にとって、適確なアドバイスとサポートをさせて頂くことが可能です。
弊所では、「要件を満たしているのか不安」「どうしても特定建設業許可を取得したい」「このやり方であっているのか?」といった1級建築士事務所の人のために、ご要望に応じて1時間11,000円の有料相談を実施しています。ネットの情報だけでは、なかなか、わかりにくい部分についても突っ込んでお話させて頂きます。ご希望の際は、ぜひ、下記、問い合わせフォームからお問合せください。