他社での取締役の経験を利用して、建設業許可を取ることはできますか?

相談者:(株)田中建設 田中社長(仮)

私の知り合いに、他の建設会社(鈴木組)で長年、取締役をしていた人(Aさん)がいます。そのAさんを、田中建設の取締役にして建設業許可を取りたいと考えています。田中建設の取締役の中に、経営業務管理責任者の要件を満たす人がいないので、建設業許可を取得する方法は、それしかないと思うのですが、いかがでしょうか?もし、許可取得が可能なのであれば、手続きをスマートサイドさんにお任せしたいです。

回答者:行政書士

ご相談ありがとうございます。お知り合いのAさんが経営業務管理責任者の要件を満たしているとよいのですが、まずは、Aさんの経歴を調査することが必要です。うまく行けば、建設業許可を取得する可能性がありますが、田中建設の取締役に就任してもらうのは、Aさんが、経営業務管理責任者の要件を満たしていることが確定してからの方がよさそうです。まずは、弊所にて、経歴確認と要件調査をさせて頂きますね。

他の会社で取締役の経験がある人を、自社の取締役に招き入れて、建設業許可を取得するというパターンは非常に多いです。経営業務管理責任者になるための「5年以上の取締役の経験」は、「申請会社(許可を取ろうとする会社)での5年間の経験」である必要はなく、他の会社での取締役の経験でもOKです。

ただし、申請をおこなう際には、その人が本当に「経営業務管理責任者の要件を満たしているか?」の確認をしてから、役員就任登記(登記簿謄本の変更)をした方がよいでしょう。さもないと、取締役就任の役員登記をした後になってから、実は「経営業務管理責任者の要件を満たしておらず、手続きを進めていたのに、建設業許可を取得することができなかった」ということになりかねないからです。

このページでは、そういったミスを防ぐために、(株)田中建設の田中社長(仮)の相談にお答えする形で、説明を進めていきたいと思います。

他社での取締役の経験を利用する場合の建設業許可取得の条件

まず、建設業許可を取得するには、「経営業務管理責任者」という要件を満たす人がいなければなりません。「経営業務管理責任者」とは、建設業許可会社における建設業部門の最高責任者のことを言います。

建設業は、他の業界に比べて「目的物の完成までに長い年月がかかるとともに、多額の費用が必要である」という特殊性があります。また、手抜き工事や欠陥工事があってはならないのはもちろんのこと、工事の過程における安全性の確保は、とても重要な課題です。さらに、工事の施工過程では「元請・1次下請・2次下請・・・」という多重下請構造が取られるのが一般的です。

このような特殊な業界において、許可を取得し500万円以上の工事を請負うことができるようにするには、それなりの経営経験が必要です。そのため、建設業許可を取得する際には「経営業務管理責任者」という要件を設け、一定程度の経営経験があることを条件に、許可を認めているのです。

経営業務管理責任者になるための3つの要件

経営業務管理責任者になるには、以下の3つの要件をクリアしなければなりません。

  • (ア)申請会社の常勤の取締役であること
  • (イ)取締役(もしくは個人事業主)としての経験が5年以上あること
  • (ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと

(株)田中建設の田中社長からの相談事例をもとに、田中建設が建設業許可を取得するためにどうすればよいか?見ていきましょう。

(ア)申請会社の常勤の取締役であること

まず、(ア)の条件ですが、田中社長の知り合いのAさんに、田中建設に正式に入社してもらい、かつ、常勤の取締役として就任してもらえれば、(ア)の条件を満たすことができます。

(イ)取締役としての経験が5年以上あること

続いて(イ)の条件ですが、Aさんが前職(鈴木組)で取締役を5年以上経験していたかどうかは、(株)鈴木組の登記簿謄本を取得すれば確認することができます。登記簿謄本は、法務局で誰でも自由に取得することができます。(株)鈴木組の謄本を取得して、Aさんの取締役就任日と取締役辞任日を確認すれば、OKです。経営業務管理責任者になるための(イ)の条件は、申請会社における取締役としての5年以上の経験である必要はありません。

ここでは、申請会社(建設業許可を取得する会社)は、田中建設です。田中建設で5年以上の取締役の経験があれば、その人が(イ)の条件を満たします。一方で、田中建設での5年以上の取締役としての経験がなくても、Aさんのように鈴木組での5年以上の取締役としての経験がある人は、(イ)の条件を満たすことになります。

(ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと

田中社長からのご相談で最も問題になるのは(ウ)の条件である「上記の5年間、建設業をおこなっていたこと」をどう証明するか?という点です。Aさんは、たしかに5年間(もしくは、それ以上の期間)取締役としての経験があります。しかし、それは、『田中建設の取締役として5年の経験がある』というわけではなく『前職である鈴木組の取締役として5年の経験がある』ということです。

この場合には、Aさんが鈴木組の取締役であった期間、鈴木組が建設業を5年以上おこなっていたことの証明が必要になるのです。

(鈴木組が建設業許可業者であった場合)

鈴木組が建設業許可業者であった場合、Aさんが鈴木組の取締役であった5年間、鈴木組が建設業許可を持っていたことを証明できれば(ウ)の条件を満たすことができます。例えば、建設業許可通知書、建設業許可申請書の副本、変更届の副本など、各種資料によって、Aさんが鈴木組の取締役であった5年間、鈴木組が建設業許可を持っていたことを証明できればOKです。

(鈴木組が建設業許可業者でなかった場合)

Aさんが取締役であった期間、鈴木組が建設業許可を持っていない会社であった場合は、どうでしょう?建設業許可を持っていないので、上記のような「建設業許可通知書」や「申請書の副本」で建設業をおこなっていたことを証明することはできません。この場合には、Aさんが鈴木組の取締役であった5年間、鈴木組が請け負った建設工事の「工事請負契約書」「注文書」「請求書と入金記録」といった書類が、(ウ)の条件(Aさんが取締役であった5年間、鈴木組が建設業をおこなっていたこと)の証明資料になります。

(ウ)の条件を証明する際の注意点

まず、Aさんは、田中建設で5年間の取締役としての経験があるわけではなく、鈴木組で5年間の取締役としての経験があるのですから、「(ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと」は、「田中建設が建設業をおこなっていたこと」ではなく「鈴木組が建設業をおこなっていたこと」になります。

続いて、上記を証明するには、Aさんの前職である鈴木組が「建設業許可を持っていたか否か」によって、準備する書類が異なってきます。

さらに、鈴木組が「建設業許可を持っていなかった場合」に必要になる書類は、Aさんが鈴木組の取締役に就任していた5年間の鈴木組の「工事請負契約書」「注文書」「請求書+入金記録」です。Aさんが前職である鈴木組と「疎遠になっている場合」や「喧嘩別れをしている場合」には、鈴木組から「Aさんが取締役をしていたころの工事請負契約書など」を出してもらうことは、難しいのではないでしょうか?

行政書士法人スマートサイドから田中社長へのご回答

Aさんが、鈴木組で5年間(もしくはそれ以上)、取締役をしていたこと(イ)は、登記簿謄本を取得すれば、すぐに確認ができます。しかし、その5年間、建設業をおこなっていたこと(ウ)については、鈴木組が建設業許可業者であるか否かによって、準備する書類が異なってきます。そのため、鈴木組が、いつからいつまで建設業許可を持っていたかという点について、許可行政庁に照会を掛けるなどして、詳細に確認をさせて頂くことが必要です。

他社の「代表取締役」は、経営業務管理責任者になれるのか?

さて、今回の田中社長からの相談は、『鈴木組で取締役をしていたAさん』を、田中建設の取締役に招き入れて建設業許可を取得したいというものでした。それでは、田中社長からの相談が、『鈴木組で代表取締役をしている鈴木社長』を、田中建設の取締役に招き入れて建設業許可を取得したいという相談であった場合は、どうでしょう?こういった場合でも、うまく行くと考えてよいのでしょうか?

この場合に問題になるのは、経営業務管理責任者になるための(ア)(イ)(ウ)の3つの条件のうち、(ア)の条件です。

  • (ア)申請会社の常勤の取締役であること
  • (イ)取締役(もしくは個人事業主)としての経験が5年以上あること
  • (ウ)上記の5年間、建設業をおこなっていたこと

経営業務管理責任者になるには「(ア)申請会社の常勤の取締役であること」が必要です。『鈴木組で代表取締役をしている鈴木社長』は、『田中建設の常勤の取締役』になることができるのでしょうか?鈴木社長が田中建設の取締役になることは、問題ありません。しかし、「常勤」になることは、すこし、難しい気がします。なぜなら、「鈴木組の代表取締役であるという地位」と「田中建設に常勤しているという地位」が相容れないからです。鈴木社長は、鈴木組に常勤しているから鈴木組の代表取締役なわけであって、鈴木社長が鈴木組と田中建設の両方に常勤しているということは一般的にはあり得ないからです。

もっとも


  • 鈴木組に鈴木社長の他に、もう1人代表取締役がいる場合
  • 鈴木組が廃業していて、実質的には活動していない場合

などには、鈴木組の代表取締役であったとしても、田中建設の常勤の取締役になれる可能性がないわけではありません。申請手続きとしては、難易度がグッと上がるイメージですが、どうしても他に手段がないという場合には、検討の余地があるでしょう。

他社での取締役の経験を利用して建設業許可を取得したい人へ

行政書士

ケースごとに場合分けをして説明してみたので、少し難しく感じたかもしれません。まずは、他の会社の取締役としての経験であったとしても、その経験が5年以上ある場合には、経営業務管理責任者になる可能性があるということを、覚えておいてください。その会社が建設業許可を持っていたか否か?によって、必要書類が変わってきますので、前の会社の許可の有無について、確認をしておくとよいでしょう。

さて、田中建設の田中社長からの相談に対するご回答は、ご理解いただけましたでしょうか?経営業務管理責任者の要件は、建設業許可を取得するにおいて、一番重要で難しい要件といっても過言でありません。そのため、確認しなければならない条件がいくつもあり、難しく感じるのも無理はありません。このページで紹介した以外にも

✅ 取締役の経験ではなく、執行役員としての経験だった場合はどうか?

✅ 出向の取締役は、申請会社に常勤していると言えるのか?

✅ 前の会社と、疎遠になっている場合、経験はどうやって証明するのか?

✅ 前の会社からの押印は必要か?書類は貸してもらう必要があるのか?

など、さまざまな疑問が湧いてくることだろうと思います。せっかく、「たくさんの書類を準備して、取締役に就任してもらったにもかかわらず、実は、経営業務管理責任者の要件を満たしていなかったので、建設業許可を取ることができなかった」ということにならないように注意したいものです。

行政書士法人スマートサイドは、東京都の建設業許可取得の専門家として、多くの建設会社を建設業許可取得に導いてきました。建設業許可取得の申請手続きは、もちろんのこと、経営業務管理責任者の要件に該当するか否かの調査・確認についても、対応させて頂くことが可能です。

弊所では、相談者1人1人への適切な対応および、質の高い面談時間の確保の見地から、初回に限り、事前予約制の有料相談(1時間11,000円)を実施しています。経営業務管理責任者の候補になる人の、経歴や過去の職務実績などを調査のうえ、要件を満たすのか否かの確認をさせて頂きます。

「他社での取締役の経験を利用して、建設業許可を取得したい」「経営業務管理責任者の要件で困っている」「建設業許可取得手続きをお願いしたい」という人は、ぜひ、事前予約制の有料相談をお申込みください。

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