建設業許可を取得したい社長必見!経営業務管理責任者・専任技術者の要件を3社の具体的事例で理解する

このページは、これから建設業許可を取得したいという会社の社長のために書きました。弊所では、長年にわたり多数の建設業者さまから、許可取得の相談を受けています。

その相談をベースに3つの会社のパターンを掲載しました。この3つの会社のパターンを例に、実際に建設業許可が取れるのか?それともあきらめざるを得ないのか?みなさんと一緒に考えながら先に進めていきたいと思います。

ぜひ、自分の会社に当てはまるケースがないか、検討してみてください。


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1.個人事業主時代の経験がものをいう。鈴木社長のケース

1-1.株式会社鈴木建設の会社の概要

株式会社鈴木建設(仮)の会社の概要
業種 内装工事業
経歴 個人事業主として8年、会社設立3年
資格 なし
指定学科の卒業 なし(普通科卒業)

太郎君:会社設立後3年しかたっていないから、取締役としての経験が5年に満たない。これでは経管の要件を満たさないのでは?

さくらちゃん:いやいや個人事業主としての経験が8年あるんだから、個人事業主の期間と取締役の期間を足し算すれば経管になれるはずだよ。

明子さん:経管にはなれると思うんだけど。資格なしで、指定学科の卒業経歴もなければ、経管の要件を満たしたとしても、専技になる要件を満たさないんじゃないの?


さて、上記の鈴木社長のケースで内装工事の建設業許可を取得することは可能でしょうか?

1-2.解説

経管と専技の要件を1つ1つ見ていくことにしましょう。

経営業務管理責任者の要件は?

まず、経営業務管理責任者の要件を見ていきます。

太郎君は「会社設立後3年しかたっていないから、取締役としての経験が5年に満たない」として経管の要件を満たさないと判断しています。しかし、経管の要件は取締役としての期間だけでなく、個人事業主時代の期間も合算して判断するべきです。そういった意味で、個人事業主としての経験も加味しているさくらちゃんの意見が正しいですね。

鈴木社長のケースでは、個人事業主時代の2年間と取締役になってからの3年間、合計5年間、内装工事をおこなっていたことを証明できれば、経営業務管理責任者の要件を満たすと言えそうです。

専任技術者の要件は?

続いて、専任技術者の要件を見ていきます。

明子さんは、鈴木社長に資格がないこと、指定学科の卒業経歴もないことの2点を踏まえて、専任技術者の要件を満たさないと判断しています。しかし、これは間違いです。

資格や指定学科の卒業経歴がなければ、10年の実務経験を証明できないか?を検討すべきですね。鈴木社長は、個人として8年、法人化して3年の間、継続してリフォーム業、内装業をおこなっているのではないでしょうか?この情報だけだど、年間の件数や売上こそわかりませんが、税務申告などをきちんとして、内装工事、リフォーム工事で生計を立てているのであれば、実績的にも問題はなさそうです。

以上より、鈴木社長は内装工事の建設業許可を取得できると考えてよいでしょう。

2.高校卒業経歴がものをいう。佐藤社長のケース

2-1.株式会社佐藤塗装の会社の概要

株式会社佐藤塗装(仮)の会社の概要
業種 塗装工事業
経歴 会社設立9年
資格 なし
指定学科の卒業 住居デザイン科(高校)の卒業経歴あり

太郎君:会社設立後、9年経っているから経営業務管理責任者の要件は満たしそうですね。

さくらちゃん:確かに、経管の要件は問題なさそう。でも、専技の要件はどうかしら?資格がないから10年の実務経験の証明が必要なはず。会社設立9年なので10年の実務経験を証明できそうにないのでは?

明子さん:でも、住居デザイン科の卒業経歴があるよ?住居デザイン科なんて聞いたことないけど、もしかしたら指定学科に該当しないかしら?


経管の要件は、問題なさそうという意見で一致しているようです。ここでも経管・専技の要件を1つ1つ見ていくことにしましょう。

2-2.解説

鈴木社長に続いて、佐藤社長のケースでは、塗装工事の建設業許可を取得することはできるのでしょうか?

経営業務管理責任者の要件は?

まず、経営業務管理責任者の要件について。

経管については、太郎君の言う通り「会社設立後、9年たっている」ことを理由に、要件を満たしそうですね。佐藤社長が嘘をついていることはないと思いますが、法務局に行って、会社の登記簿謄本を取得すれば、裏付けを取ることができます。

専任技術者の要件は?

続いて、専任技術者の要件はどうでしょうか?

塗装工事については、1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士の資格があれば、実務経験の証明は必要ありません。しかし、佐藤社長にも(株)佐藤塗装の社員の中にも、資格を持っている人はいません。とすると、10年の実務経験を証明するしかないのでしょうか?

10年の実務経験を証明するしかないとすれば、佐藤社長の前職にもよりますが、会社設立後9年しかたっていないことを考えると、あと1年待たないと専任技術者の要件を満たさないということになって、現時点での建設業許可取得は厳しいように思えます。

しかし、あきらめるのはまだ早い。

住居デザイン科の卒業経歴

明子さんが指摘している通り、佐藤社長は高校の住居デザイン科を卒業しています。とすると、住居デザイン科が塗装工事の指定学科に該当すれば、10年の実務経験は5年に短縮されるので、住居デザイン科の卒業経歴+5年の実務経験の証明によって、専任技術者の要件をクリアできそうです。

住居デザイン科と聞くと、工事よりも建築設計やデザイン関連の学科にも思えますが、実は、塗装工事の指定学科に該当します。この点については、都庁や県庁の手引きに掲載されている「指定学科一覧」をよく確認するとともに、該当するかわからない場合は許可行政庁に照会をかけてみるとよいでしょう。

佐藤社長は、卒業した高校から住居デザイン科の卒業証明書を取り寄せるとともに、5年の塗装工事の実務経験を証明することにより、専任技術者の要件をみたすことになります。

以上より、(株)佐藤塗装は塗装工事の建設業許可を取得することができそうです。

3.ちょっと厳しい。独立を早まった。田中社長のケース

3-1.株式会社田中工業の会社の概要

株式会社田中工業(仮)の会社の概要
業種 とび・土工・コンクリート工事業
経歴 会社設立1年
資格 なし
指定学科の卒業 なし(普通科卒業)

太郎君:うーん。田中社長は、会社を設立して1年だし、その前の経歴が会社の営業職なので、経管の要件を満たしそうにないですね。

さくらちゃん:たしかに。資格も実務経験もないようじゃ、建設業許可の取得をあきらめてもらったほうがよいかもしれない。

明子さん:ちょ、ちょっと待って!それじゃ田中社長が可哀そうすぎる!田中社長の意欲と情熱で役所を説き伏せれば、なんとかなるんじゃないかしら。


田中社長の意欲と情熱は、建設業許可取得に影響を及ぼすのでしょうか?ここでも、経管・専技の要件を1つ1つ見ていくことが必要です。

3-2.解説

鈴木社長、佐藤社長は、建設業許可取得の可能性が大いにありとのことでしたが、田中社長はどうでしょう?

経営業務管理責任者の要件は?

まず、経営業務管理責任者の要件について。

この点については、太郎君の言う通り、会社を設立して1年でかつ、前職が営業職だと、経管の要件に該当する可能性というのは極めて低いように思います。

もし仮に、前職も「とび・土工の個人事業主でした」とか、前職は「建設会社の取締役をしていました」というのであれば、「取締役としての経験5年」、「個人事業主としての経験5年」、もしくは「取締役としての経験+個人事業主としての経験の合計が5年」、という経管の要件を満たすことも可能かもしれません。

しかし、役職のつかない会社の社員(営業職)である以上、経管の要件を満たすことはないと思います。

専任技術者の要件は?

また、専任技術者についても、さくらちゃんの言う通り、資格なしで、高校の普通科の卒業だと指定学科にも該当しないため、10年の実務経験を証明しない限り、専任技術者になることができません。

田中社長の場合は、経管の要件を満たす人を取締役に招き入れ、かつ、とび・土工・コンクリート工事の専任技術者の要件を満たす人を社員として採用するなど、外部からの登用を検討するしか、建設業許可取得の道がありません。

明子さんは「意欲と情熱で役所を説き伏せれば、なんとかなるんじゃないかしら」と、かすかな希望を見出そうとしています。残念ですが、意欲や情熱で、許可要件を満たすことはありません。

田中社長のケースを踏まえて

田中社長のようなケースは、よく見受けられます。

「前職の社長と喧嘩をして独立した」「勤務先の雰囲気になじめず、後先考えずに自分で建設会社を設立した」といったことも耳にします。しかし、どんな事情があっても、どんなに許可が欲しくても、意欲や情熱だけで建設業許可を取得することはできません。

これから、独立や起業を考えている人は、「建設会社を設立したけど、建設業許可が取れない」といった事態にならないように、事前に入念な準備をしていただきたいと思います。

4.どうしても経管・専技の要件を満たさない場合の対処法

(株)田中工業の田中社長のように、社内の人間だけでは、どうしても経管・専技の要件を満たさないケースがあります。むしろ、建設業許可の要件を十分に満たしているというケースはまれで、ほとんどの人が「取締役としての経験が数年足りない」「技術者としての実務経験の期間が短い」といったような欠陥を抱えています。

そんな時は、どうしたらよいのでしょうか?

4-1.許可要件を満たすまで待つ。

1つの方法として考えられるのは、許可要件を満たすまで待つという方法です。私のお客さまの中でも、建設会社を設立してから5年間、経管の要件を具備するまで、建設業許可取得を待ったお客さまが複数いらっしゃいます。

具体的な事例

  1. 平成29年 7月に会社設立。
  2. 令和 4年 7月に建設業許可の要件を充足。
  3. 令和 4年 9月に建設業許可を申請。
  4. 同年10月に無事、東京都知事許可を取得。​

というケースです。経管の要件は、会社設立当初からの代表取締役としての5年の経験で充足することができましたが、この社長のすごいところは、自分で勉強して2級管工事施工管理技士の資格を取得し、専技の要件も充足してしまったところです。

2級管工事施工管理技士の資格を取得したことによって

この社長は、前出の田中社長と同じように、高校の普通科の卒業です。そうすると、10年の実務経験を証明しなければ専任技術者になることができません。しかし「会社設立から5年がたって、やっと経管の要件を満たすようになったのに、これから、あと5年も待つことはできない」と自ら資格取得にチャレンジしたようです。

その結果、2級管工事施工管理技士の資格をとることができ、専任技術者の要件については、実務経験の証明をすることなく、無事建設業許可を取得することができました。

このように、現時点で、許可要件を満たさない場合には、許可要件を充足する日が来るのを待つ、もしくは自分で資格を取得するということも考えられます。

4-2.身内、友人、知り合い、人材会社からの紹介

もっとも、すべての人が、何年も許可取得まで待てるわけではないのも事実です。また、資格の取得といっても、そう簡単にできるものではありません。

中には縁故者を頼りに許可を取得する会社も

既存の役員、既存の社員では、どうしても経管・専技の要件を満たさず、建設業許可を取得することができない場合、身内(親・兄弟・親戚)、友人、知り合いを頼って「経管の要件を満たす人を取締役に」「専技の要件を満たす人を社員に」採用することはよくあります。

人材会社の利用は?

規模の大きい会社の中には、人材会社のサービスを利用して経管や専技の要件を満たす人を紹介してもらい、面接の上、社内に招き入れるという方法をとっている会社もあります。

人材会社は「大手の建設会社の役員を退任した人」や「過去に建設会社を経営していたものの第一線を退いた人」など建設業許可取得のための要件を満たしている人を、許可を取りたがっている会社に紹介・取次しています。

きちんとした経歴のある人を採用したい、建設業許可を取得するための体制を会社を上げて整えたいという意思のある人にとっては、大いに利用する価値があるサービスであると思います。しかし、役員待遇として招き入れるからにはそれなりの報酬が必要ですし、また、人材会社にも紹介料として、かなりの謝礼が発生するという話も聞いたことがあります。

条件面・待遇面でマッチングが難しい場合も

名義貸しなどの、違法な行為を除いて、人材会社からの紹介を受けて、許可要件を充足し建設業許可を取得するという方法が、悪いわけではありません。しかし、家族経営の小規模会社や、設立したての経歴の浅い会社だと、費用面・待遇面の両方で、候補者との条件のマッチングが難しいのではないか?というのが私の印象です。

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