【専門家に聞く】建設業許可の取得が早まる!経験年数の短縮と学歴との関係を解説

建設業許可を取得しようとするときに、立ちはだかるのが「専任技術者の実務経験が10年必要」という条件です。建築士や施工管理技士の資格を持っていない場合、原則として10年の実務経験がなければ、建設業許可を取得する際に必要な専任技術者の要件を満たすことができません。そのため「うちの会社は、許可取得は、無理かもしれない」とあきらめかけた方も多いのではないでしょうか。実はこの実務経験は、ある条件を満たすことで“短縮”が可能です。

本インタビューでは、行政書士法人スマートサイド代表・横内先生が、学歴によって変わる実務経験年数の考え方や、許可取得をスムーズに進めるための実務的なポイントを解説。制度のしくみから実務経験証明のコツまで、これから建設業許可を目指す方にとって必読の内容です。

専任技術者の要件について


それでは、横内先生、本日もよろしくお願いします。


はい。よろしくお願いします。

今日のテーマは、「実務経験年数の短縮と学歴の関係性」についてですね。はじめて建設業許可を取得する人にとって、難しい部分ですので、なるべくわかりやすく、丁寧な説明を心がけていきたいと思います。結論からいうと、今日、お話しすることを理解しておくと、建設業許可取得の可能性が一気に高まるばかりでなく、許可取得までの期間を短縮することができますので、ぜひ、最後まで、お付き合い頂ければと思います。

まずは、建設業許可を取得する際に必要な「専任技術者の要件」について、簡単に説明します。建設業許可を取得するには、会社の中に「専任技術者」がいなければなりません。「専任技術者」とは、「建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者」のことを言いますが、ここでは、端的に「工事の技術上の責任者」という理解でよいと思います。

建設業は、建物の建築、道路の舗装、建造物の解体など、高度で専門的な知識が求められます。そのため、専任技術者の存在を建設業の許可要件とし、「一定程度の技術を持っている人が、工事の責任者として常勤している会社」にしか許可を与えないようにしているのです。


建築士や施工管理技士という資格を持っている人であれば、「専任技術者」になることができますよね。


おっしゃる通り、建築士や施工管理技士という資格を持っている人は「専任技術者」になることができます。その理由は、こういった資格を持っていること自体が、工事の技術上の責任者としての能力や知識や技術を担保していることに繋がるからです。試験に合格し資格を保有しているのですから、資格者が専任技術者として常勤している会社には、建設業許可を与えても問題ないといえるわけです。


そうすると、建築士や施工管理技士の資格がないと、「専任技術者」になることができないのですか?


そういうわけではありません。

建築士や施工管理技士という資格がなくても、専任技術者になることができます。しかし、その場合は、原則として10年の実務経験の証明が必要になるのです。建設業許可を取得することの難しさは、10年という長いスパンで実績を証明しなければならない点にあります。

先ほどの話に戻りますと、「専任技術者」とは「工事の技術上の責任者」のことでした。建築士などの資格を持っていれば、責任者としての適格を備えていることを「合格証明書」や「免状」で証明することができます。しかし、資格を持っていないと、「合格証」や「資格証」で「工事の技術上の責任者」としての能力を証明することができません。そこで、資格を持っていない人については、原則として10年の実務経験を積むことを求めているのです。

「学歴」による実務経験期間の短縮


「10年の実務経験」の話と「学歴」の話とは、どう関係があるのですか?


するどい質問ですね。

実は、専任技術者になるには、原則として10年の実務経験の年数が必要ですが、特殊な学科の卒業経歴がある場合には、10年の実務経験期間が3~5年に短縮されることがあるのです。10年が3~5年に短縮されるわけですから、とてもすごいことなのですが、意外と多くの人が、学歴による実務経験の短縮制度を認識していないようです。


学歴次第で、10年を待たずして、建設業許可を取得することができるというわけですね。


はい。学歴次第では、10年を待たずして、建設業許可を取得することができます。しかも、その学歴は、社長や役員だけでなく、社員でもよいのですから、許可取得の可能性が一気に広がります。

具体的に言うと、「土木科」「建築科」「都市科」「電気科」「機械科」などの学科を卒業している経歴があると、実務経験を短縮することができます。これらの学科のことを「指定学科」と言います。「大学」の指定学科を卒業している場合、実務経験の年数は3年で足ります。「高校・専門学校」の指定学科を卒業している場合、実務経験の年数は5年で足ります。

すこしわかりづらいので、弊所で実際に「実務経験の証明期間を短縮することに成功した事例」をご紹介させて頂きますね。

まず、1件目(※注)は、機械工学科の卒業経歴を使って、管工事の建設業許可を取得することに成功した事例です。この会社は、空調設備や給排水設備の販売、設置、メンテナンスを行っている会社でした。500万円以上の工事を施工するために、建設業許可を取得したいというご相談です。この会社には、管工事の施工管理技士のような資格者は一切いません。そうすると、10年の実務経験を証明しなければ建設業許可を取得することができません。

しかし、この会社の社員の中に、大学の機械工学科を卒業している社員がいました。そこで、この社員の大学卒業後3年間の管工事の実務経験を証明し、「専任技術者の要件」をクリアし、建設業許可を取得することができたのです。もし、この社員がいなかったら、もしくは、この社員が指定学科の卒業でなかったら、10年の実務経験を証明しなければならず、建設業許可取得のハードルは、グッと上がっていたことでしょう。

(注)機械工学科の卒業経歴を使って、管工事の建設業許可を取得することに成功しました!

また、2件目(※注)は、電気科の卒業経歴を使って、電気通信工事の建設業許可を取得することに成功した事例です。この会社は、すでに電気工事の建設業許可を持っていましたが、取引先から電気通信工事業の建設業許可も持つように、催促されたため、電気通信工事の建設業許可も取得しました。

この会社の場合、社長に高校の「電気科」の卒業経歴がありました。そのため、10年ではなく、5年の電気通信工事の実務経験を証明し、社長を電気通信工事の専任技術者にすることによって、許可取得に成功することができました。実は、この会社は、電気通信工事をやり始めてから、まだ、7年くらいしか経っておらず、10年の実務経験の証明ができない会社でした。そのため、「電気科」の卒業経歴を使って、10年を5年に短縮できたからこそ、電気通信工事の建設業許可を取得できたわけで、もし仮に、「電気科」の卒業経歴がなかったら、許可取得まで、あと3年は待たなければならないというケースでした。

(注)電気通信工事業の建設業許可取得~高校の電気科(指定学科)の卒業資格を活用した事例~

実務経験期間が短縮される「学歴」の確認方法


具体的な事例を聞くと、説得力が増しますね。ところで、土木科や建築科という指定学科に該当するか否かは、どうやって確認すればよいのですか?


まずは、行政が発行している手引きで確認してみることをお勧めします。東京都の手引きには、ざっと数えて100以上もの指定学科が掲載されています。そのため、社長自身や社員が卒業した学科が、指定学科に該当して実務経験年数の短縮の恩恵を受けることができるかどうかは、まずは、手引きを確認してもらうとよいと思います。

その際の注意点が1つあります。それは、手引きに記載されている指定学科が全てではないということです。


「手引きに記載されている指定学科がすべてではない」というのは、どういうことですか?


仮に、社長や社員の卒業した学科が、手引きに掲載されていなくても、あきらめてはだめということです。この点については、見過ごしてしまう人が多いので、ぜひ、覚えて頂きたいのですが、先ほど、私は、「ざっと数えて100以上の指定学科が掲載されている」と言いましたが、これが全てではないのです。

手引きに掲載されていない学科でも、指定学科に該当し、実務期間が短縮されるケースがあるのです。うちの事務所で、手引きに該当がないにも関わらず、指定学科として実務経験の短縮が認められたケースとして「建築設計科」「機関学科」「テレビ電気科」「建築室内設計科」などがあります。

  • 建築設計科は、内装工事の指定学科として10年が5年に短縮
  • 機関学科は、電気通信工事の指定学科として10年が3年に短縮
  • テレビ電気科は、機械器具設置工事の指定学科として10年が5年に短縮
  • 建築室内設計科は、とび工事の指定学科として10年が3年に短縮

というように、実務経験期間を短縮することができました。


「手引きに掲載されていない学科」の場合、どうやって指定学科に該当するか?確認すればよいのですか?


手引きに掲載されていない学科の場合、卒業証明書と履修証明書等を事前に準備し、許可行政庁まで行って、審査担当者に確認をしてもらう必要があります。先ほどお話しした4つの学科も、すべて、都庁に行って、「指定学科に該当するか否か」「10年の実務経験を短縮できるか否か」という点について、照会をしています。

さすがに、普通科や英文科など、文系の学科が、指定学科に該当することはないでしょうが、工事に関連する学科を卒業している場合には、ダメもとで、卒業証明書と履修証明書を卒業した学校から取り寄せて、行政に確認してみるとよいと思います。

短縮された実務経験を証明する方法


指定学科に該当したとしても、実務経験の証明は、必要なのですよね?


はい。指定学科に該当したとしても、3年ないしは、5年の実務経験期間は必要です。その期間、ちゃんと工事の実績があることを、書類で証明しなければなりません。実務経験期間を証明するための書類については、前回のインタビュー(※注)で詳しく説明していますので、そちらの記事を読んで頂きたいのですが、簡単に説明すると、「工事請負契約書」「工事注文書」「請求書と入金記録」によって、工事の実績を1件1件証明していく必要があります。

(注)【専門家に聞く】専任技術者の証明書類、どこまで揃えれば大丈夫?実務のポイントを解説

この点については、東京都の場合と他県との場合で、証明する件数や割合が違ってきますので、必ず、手引きで確認する必要があります。東京都の場合には、3か月に1件の割合で、工事の実績を証明する必要があります。つまり、3か月に1件の割合で「工事請負契約書」などの書類を準備して、申請に臨まなければならないわけです。

10年間だと40件以上の証明資料が必要になりますが、仮に実務経験期間が5年に短縮されると証明資料も半分の20件で足りることになります。実務経験期間の短縮によって、過去の契約書や注文書を準備する手間も、だいぶ軽減されることになるでしょう。


期間が短縮されると同時に、証明資料の準備の件数も減るのですね。


はい。なので、「指定学科に該当するか否か?」は、許可取得に対して、かなり大きな影響を与えることになるのです。この点については、もう少し認知度が上がってもよいと思うのですが、現時点では、なかなか、理解している人は、少ないように思います。


ありがとうございました。とても、貴重な情報を得ることができました。そろそろ、お時間ですので、最後に一言お願いいたします。


今日お話しした、実務経験年数の短縮と学歴の関係は、あまり知られていません。裏技でもなければ、非公開の情報でもなく、手引きにきちんと記載されている情報です。弊所では、指定学科の卒業経歴を使って、多数の建設業許可取得の実績があることは、先ほど、お話しした通りです。

こういったことを知らずに、漠然と「建設業許可を取るには、資格が必要…」とか「10年経たないと、専任技術者になることができない…」と思い込んで、建設業許可取得をあきらめている人は、非常に多い印象です。建設業許可の取得は、建設会社に限らず、デザイン会社や不動産会社やイベント会社なども必要になるケースが増えています。

資格を持っている社員がいなくても、「建築科や電気科といった特殊な学科を卒業している社員がいないか?」ぜひ、確認してみてください。御社にとっての建設業許可取得の近道が見つかるかもしれません。

このインタビュー記事が、これらか建設業許可を取得しようと考えている会社の、参考にしていただければ幸いです。最後まで、ありがとうございました。

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