【専門家に聞く】知らないと危険!経営業務管理責任者の要件でつまずく会社の共通点

建設業許可の取得や更新に欠かせない「経営業務管理責任者」の要件。しかし、この要件を正しく理解できず、許可申請や更新でつまずいてしまう建設会社が後を絶ちません。「経営業務管理責任者の要件さえ満たせば、建設業許可を取得できるのに…」と頭を抱えている人も多いのではないでしょうか?

そこで、本日は、東京都の建設業許可の専門家で、経営業務管理責任者の要件に詳しい行政書士法人スマートサイド代表の横内先生に、「つまずきやすいポイント」や「その原因となる共通点」を詳しくお聞きしました。

「これから建設業許可を取得したい」とお考えの建設会社経営者の皆さまに向けて、経営業務管理責任者の要件をわかりやすく整理し、失敗を避けるための具体的なアドバイスをお届けします。

経営業務管理責任者の意味・条件


それでは、早速ですが、横内先生、よろしくお願いします。


はい、よろしくお願いします。本日は、建設業許可を取得するための経営業務管理責任者の要件についてですね。建設業許可を取得しようと考えている法人の代表者はもちろんのこと、建設業許可取得で困っている「会社役員・総務部長・事務担当者」といった幅広い人のお役にたてるように、なるべくわかりやすい言葉で説明をさせて頂きますね。

そもそも、「経営業務管理責任者」とは何なのか?という説明から必要になるのでしょうが、経営業務管理責任者には、形式的な意味と実質的な意味の2つの意味があります。

形式的な意味でいうと、「経営業務管理責任者」の要件を満たさないと建設業許可を取得することができないという点です。実質的な意味でいうと、「経営業務管理責任者」とは、会社の建設業部門における最高経営責任者であるという点です。

形式的な意味については、比較的わかりやすいと思います。まさに、いま、お話した通り「経営業務管理責任者」がいないと建設業許可を取得することができません。経営業務管理責任者の存在が、建設業許可取得の要件になっているのです。なので、建設業許可を取得したいと考えたら、まずは、経営業務管理責任者に該当する人がいるかいないかが、重要になってくるのです。

実質的な意味での「経営業務管理責任者」については、すこし、説明が必要かもしれませんね。実質的な意味での「経営業務管理責任者」は、会社の建設業部門において、対内的にも対外的にも、最終的な権限をもち、責任を負う人と言って良いでしょう。役職で言うと、代表取締役が、これにあたります。ただし、建設業だけでなく、警備業や、不動産業を行っている会社もあるでしょう。そういった会社の場合、必ずしも、代表取締役ではなく、建設業部門における取締役が経営業務管理責任者になることもあります。

「代表取締役が経営業務管理責任者にならなければならない」というわけではなく、「平取締役が経営業務管理責任者になっても、構わない」という点をぜひ、覚えておいて欲しいです。


なるほど。それでは、具体的に「経営業務管理責任者」として認められるには、どういった条件を満たす必要があるのですか?


はい。ここからが本題です。建設業許可の取得でつまずく方は、「どうやったら経営業務管理責任者になれるのか?」という点について、理解がない人が多いです。そこで私なりにわかりやすく説明させて頂くと、経営業務管理責任者になるには、(ア)(イ)(ウ)という3つの条件を満たす必要があります。

(ア)は、『申請会社の常勤の取締役』であること

(イ)は、『取締役もしくは個人事業主として5年以上の経験』があること

(ウ)は、『その5年間、建設業をおこなっていたこと』

の3つです。

(ア)申請会社の常勤の取締役


(ア)(イ)(ウ)の3つですか?なかなか一度に覚えきれそうにありません。すこし、詳しく説明して頂けますか?


はい。そうですね。1度に全ての条件を覚えるのは大変だと思うので、このインタビュー記事をお読みのみなさんは、ぜひ、繰り返しこのページを読むことができるように、リンクを貼るとか、お気に入りに登録するとかして、工夫をしてもらいたいです。

まずは、(ア)の『申請会社の常勤の取締役』についてです。

『申請会社』とは、許可を取得したい会社のこと、つまり、みなさんの会社のことです。経営業務管理責任者は、みなさんの会社に『常勤』している『取締役』でなければなりません。

まず、『常勤』についてですが、みなさんの会社に常勤していない人を、経管にすることはできません。それは、名義貸しになってしまいます。先ほどお話ししたように、経管の実質的な意味は、「建設会社の建設業部門における最高経営責任者」でしたね。「建設業部門における最高経営責任者が会社に常勤していない」ということはあり得ないので、申請会社に常勤していることは必須です。

次に『取締役』についてですが、『取締役』に就任しているか否かは、登記簿謄本で確認することができます。ここで注意して欲しいのが、「執行役員」と「出向役員」です。実は、あまり知られていないかもしれませんが「執行役員」も「出向役員」もどちらも、(ア)の条件を満たすことができます。つまり「執行役員」「出向役員」のどちらも、経営業務管理責任者になることができる可能性があるということです。


通常の取締役ではない、「執行役員」や「出向役員」でも、経営業務管理責任者になることができるのですか?


はい。建設業許可の取得で、つまずきやすい会社というのは、往々にしてこういった知識に乏しい傾向にあるのですが、実は「執行役員」や「出向役員」でも経営業務管理責任者になることができます。もちろん(イ)と(ウ)の条件を満たしていればの話ですが。

「執行役員」は、登記簿謄本に記載されていないため、「建設業部門における最高経営責任者」というポジションを証明しずらいのは事実です。しかし、その場合でも、組織図や業務分掌規程や取締役会規程や執行役員規則といった書類を提示することによって、経営業務管理責任者になることができるのです。たしか、ホームページに成功事例として掲載しているはずですので、興味のある人はそちらをご覧ください(※注)。

(注)「取締役でない執行役員を経営業務管理責任者にして、東京都の建設業許可を取得した事例を詳細解説」

一方で「出向役員」は、あくまでも「親会社」や「グループ会社」からの出向というポジションなので、申請会社に常勤していることの証明が難しいのですが、この場合も、出向協定書や出向契約書や出向辞令のような書類があれば、(ア)の条件を満たすことができるので、建設業許可取得の可能性が高いのです。

(イ)取締役もしくは個人事業主として5年以上の経験


なるほど。「執行役員制度を導入している会社」や、「親会社・グループ会社からの出向役員を受け入れている会社」には、ぜひ、このインタビューを聞いて欲しいですね。


はい。私もそう思います。

続いて(イ)の条件、『取締役もしくは個人事業主として5年以上の経験』を満たす必要があります。ここで知っておいて欲しいことが、2つあります。

まず、1つ目が、取締役としての経験年数と個人事業主としての経験年数は、合算できるという点です。たとえば、取締役に就任して5年以上経過する場合。この場合は、取締役としての経験だけで(イ)の条件を満たすことができます。しかし、個人事業主が法人成りして、まだ2年しか経っていないようなケースでは、取締役としての経験が2年しかありません。このような場合には、個人事業主としての経験を合算して、経験年数を算出することができます。

実際に私の事務所のお客さまでも、「個人事業主としての3年の経験」と「法人成り後の代表取締役としての2年の経験」を合算した「5年の経験」で、経営業務管理責任者の要件を証明したお客さまがいらっしゃいます(※注)。

(注)『経営業務管理責任者の証明方法を許可取得事例とともに解説。「個人事業主3年」と「代表取締役2年」』

2つ目が、他社の取締役であった経験も利用できるという点です。(イ)の『取締役として5年以上の経験』は、なにも自分の会社での取締役としての経験である必要はありません。前の会社の取締役であった経験も利用することができます。例えば、「前職で大手ゼネコンの取締役をしていた」とか「昔、建設業許可業者で取締役に就任していたことがある」という場合でも、『取締役としての5年以上の経験』に換算することができます。

取締役の経験や個人事業主の経験は、過去の経験・他社での経験など、さまざまな視点で見ていく必要があるのです。


過去の経験・他社での経験を使って、経営業務管理責任者になることも十分考えられるのですね。


はい。私が、駆け出しのころに担当した案件で、あらたに会社を立ち上げた60代の社長が、30代のころに別の建設会社で取締役をやっていたことを証明したケースがあります。これこそまさに、(イ)の条件を考えるにあたって、参考になるケースです。

その社長は、60代になって新たに会社を立ち上げましたが、会社を立ち上げてから、まだ1年しか経っていません。これだけだと(イ)の条件を満たすことができません。しかし、この社長は30代のころに、別の建設会社で長年にわたって取締役を経験していました。この場合、現時点の自社での取締役としての経験は、1年しかありませんが、過去の他社での取締役としての経験を証明できれば、余裕で『取締役として5年以上の経験』を証明することができます。

そこで、私は、現時点では解散してしまった過去の会社の「閉鎖事項証明書」を取得して、その社長が長年にわたって取締役に就任していたことを証明したのです。

(ウ)その5年間、建設業をおこなっていたこと


なかなか興味深いケースですね。(ウ)の条件の説明もお願いします。


はい。

ここまで(ア)『申請会社の常勤の取締役』と(イ)『取締役もしくは個人事業主として5年以上の経験』について、話を進めてきましたが、最後の条件が(ウ)『その5年間、建設業をおこなっていたこと』です。

(イ)の『取締役もしくは個人事業主としての5年以上の経験』は、飲食店の経営経験やアパレル会社の経営経験では、ダメで、建設業の経営経験でなければならないのです。ここが大きなポイントです。注意喚起も含めてお話ししますが、令和2年10月の制度改正の際に、「経営業務管理責任者の要件の緩和」というテーマが独り歩きして、どんな職業・どんな業界の経験であっても、取締役や個人事業主としての経験が5年以上あれば、経営業務管理責任者になることができるという情報が、ネット上でよく出回っていました。

しかし、実務上は、そうはなっていないので注意が必要です。

(イ)の『取締役もしくは個人事業主として5年以上の経験』は、「建設業をおこなっていたこと」が必要なのです。この「建設業をおこなっていたこと」は、「工事請負契約書」や「工事請書」や「請求書・入金記録」で証明していくのですが、「証明書類や証明の仕方」については、話すと長くなるので、また、別の機会にお話しさせて頂くとして、今日のインタビューでは割愛させて頂きますね。

建設業以外の会社が「経営業務管理責任者」をクリアする方法


(ウ)の条件として「建設業をおこなっていたこと」が必要であるとすると、建設業者以外は、建設業許可を取れないということになりませんか?たとえば、不動産会社や設計会社は、「建設業をおこなっている」わけではないので、(ウ)の条件を満たすことができず、どんなに頑張っても建設業許可を取得できないことにならないでしょうか?


とてもするどい質問ですね。

実際そういった勘違いをしている人が非常に多いですし、私のもとにもそういったご相談が多いのは事実です。まさに、今日のテーマである「つまずきやすいポイント」と言えるかもしれません。しかし、建設会社しか建設業許可を取得できないわけではありません。

例えば、

  • 不動産会社が自社物件のリフォームや修繕工事を請負う場合
  • 設備機械の販売会社が、販売とともに設置工事を行う場合
  • デザイン会社がデザインの特性を生かした内装を維持する場合
  • 設計会社が設計のみならず工事の施工も自社で行う場合

など、さまざまな業界のさまざまな会社が建設業許可を取得することに成功しています。こういったケースにおいて、(ウ)の『その5年間、建設業をおこなっていたこと』をどのように証明して行くかが大きなポイントになります。『建設業をおこなっていたこと』は、建設工事を施工していたことを証明できればよいわけですから、不動産業がメインであったり、設備製造がメインであったり、デザイン・設計がメインであったとしても、「工事を施工していたこと」を「請求書や入金記録」などの資料を使って証明できれば良いのです。

行政書士法人スマートサイドが、多くの建設業許可取得の実績を上げているのは、実は、こういった工事の実績の証明を得意としているからなのです。そのため、内装工務店や解体工事業者や道路舗装会社といったいわゆる「建設工事会社」だけではなく、幅広く「物件管理をしている不動産会社」や「個性あるデザインを売りにしている設計会社」や「イベント運営を主たる業務としているイベント会社」などの建設業許可取得をサポートするのも多いのが事実です。

経営業務管理責任者の要件は、何となくわかっていただけましたか?


横内先生の話を聞くことによって、聞く前よりも、だいぶ理解がはかどりました。ただ、きちんと頭の中に落とし込むまでは、もうすこし時間がかかりそうです。


そうですね。今日、お話ししたことは、すぐに理解できるものではないでしょう。私も、さまざまな経験や勉強を重ねて今があるわけですので、一度で、全てを理解する必要はありません。

最後になってしまいましたが、私の事務所のホームぺージで、経営業務管理責任者について解説しているページがあります。比較的よく読まれているのが、「成功事例」のページ(※注)と「徹底解説」のページ(※注)です。「どうしても急いで建設業許可を取得したい」という会社の役員の人や、「何とかして建設業許可を取得しなければならない」という会社の総務担当の人など、これから建設業許可の取得を目指している人がいればぜひ参考にしていただくとよいのではないかと思います。

(注)「【初心者必見】建設業許可の経営業務管理責任者|証明の秘訣と成功事例」

(注)「建設業許可を『取得・維持』したい人のための経営業務管理責任者【徹底解説】」


それでは、お時間になりました。長時間にわたって、インタビューに応じて頂きありがとうございました。


こちらこそ、ありがとうございました。

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