【専門家に聞く】建設業許可の経営業務管理責任者とは?うまく行く人・行かない人の違い

建設業許可を取得するには、「経営業務管理責任者が必要である」ということが頭ではわかっていても、

■ 自分の会社の社長は「経管」の要件を満たすのか?

■ 実際に、どうやって証明していくのか?

■ どういったケースであれば、「経管」を満たすと言えるのか?

という点について、疑問を抱えている人は多いのではないでしょうか?特に最近では、建設会社以外の、デザイン会社・設計会社・不動産会社・イベント会社などから、同様の問い合わせが増えていると聞きます。そこで、本日は、建設業許可取得のスペシャリストである行政書士法人スマートサイド代表の横内先生に、経営業務管理責任者の要件の証明が「うまく行く人・行かない人」の違いを、実際のケースにもとづいて、お話しして頂こうと思います。

「経営業務管理責任者の要件」が、うまく行く人


それでは、横内先生。本日も、よろしくお願いします。今日のテーマは、「建設業許可の経営業務管理責任者」についてです。


はい。こちらこそ、何卒、よろしくお願いいたします。

本日の「経営業務管理責任者」のテーマですが、抽象的な法律論を話しても、あまり理解が深まらないと思いますので、私の事務所で実際に担当した案件など、具体例を交えつつ、お話しできればと考えています。

まず、前提として「経営業務管理責任者」の要件を満たすには、

  • (ア)申請会社の常勤の取締役
  • (イ)取締役もしくは個人事業主としての5年以上の経験
  • (ウ)その5年間、建設業をおこなっていたこと

の3つが必要です。この点については、前回のインタビューでもお話ししているので、もし、わからない人がいたら前回のインタビュー記事(※注)をご確認ください。

(注)【専門家に聞く】知らないと危険!経営業務管理責任者の要件でつまずく会社の共通点

今日は、(ア)(イ)(ウ)の条件を理解されていることを前提に、話を進めていきますね。


はい。ぜひ、お願いします。


まずは、1番わかりやすいケースとして、「法人設立後5年以上経過している会社」のケースを挙げますね。経営業務管理責任者になるためには、「取締役もしくは個人事業主としての5年以上の経験」が必要です。

たとえば、Aさんが会社を立ち上げ、設立と同時に代表取締役に就任し5年が経過しているような場合。この場合、Aさん自身に「取締役としての5年以上の経験」があるので、(イ)の条件を満たすことになります。そのため、こういったケースでは、経営業務管理責任者として認められる可能性が高いです。

一方で、会社を立ち上げて3年しか経過していないという場合はどうでしょう。たとえば、Bさんが会社を立ち上げ、設立と同時に代表取締役に就任したものの、まだ、設立から3年しか経過していないような場合です。この場合、どうあがいても、Bさん自身に「取締役としての5年以上の経験」があるとは言い難いです。そのため、Bさんは、一見すると経営業務管理責任者の要件を満たさないようにも思えます。

ただ、Bさんが会社を立ち上げる前に、個人事業主をしていれば話は別です。

Bさんが長年、個人事業主として事業をおこなっていて、個人事業主から法人成りしてB社を立ち上げたような場合です。この場合には、「取締役としての経験」は5年に満たないかもしれませんが、「個人事業主としての経験と取締役としての経験」を合算すれば5年を上回ります。そのため、Bさんは、(イ)の条件を満たし、経営業務管理責任者になれる可能性が高いと言えます。


うまく行きそうな人の特徴として「法人設立後5年以上経過している」もしくは「法人設立前に個人事業主としての経験がある」という共通点がありそうですね。他に、どういった場合に、経営業務管理責任者として認められることができそうですか?


「取締役としての経験」や「個人事業主としての経験」は、ふつうに会社勤務している人ができるような経験ではありません。そこで、もう少し緩やかな経験ということで「令3条の使用人」や「執行役員」の経験が挙げられます。

たとえば、取締役としての経験がなかったとしても、『「令3条の使用人」や「執行役員」の経験ならある』という人もいるかもしれません。「令3条の使用人」とは、建設業許可会社における支店長としての届出がされている人のことを言うのですが、法令の詳しい解釈は、いったん脇に置いといて、仮に、取締役としての経験がなかったとしても、「令3条の使用人(支店長)」や「執行役員」の経験があるという人がいれば、ぜひ、その人の、経験年数を確認してもらいたいところです。

「令3条の使用人」は、大臣許可業者のような大きな会社で支店長や支社長のポジションにあった人のことを言いますが、たとえば、Cさんが「令3条の使用人」としての経験が5年以上ある場合、Cさんは(イ)の条件を満たすことになります。

また、規模の大きい会社では、取締役会を設置の上、執行役員制度を設けている会社も多いと思います。執行役員は取締役と異なり登記されていないので、執行役員の経験を使って経営業務管理責任者の要件を証明することは難しい側面があります。しかし、執行役員の経験が5年以上あれば(イ)の「取締役としての5年以上の経験」を充足する可能性もあります。


「令3条の使用人」と「執行役員」ですね。


はい。

「取締役としての5年以上の経験」があることが望ましいのですが、どうしても見つからない場合には「令3条の使用人」「執行役員」をあたってみましょう。

繰り返しになりますが、「令3条の使用人」は、国土交通大臣許可を持っている建設会社の支店長や支社長として登録されていた経験のある人のことをいいます。また、「執行役員」は、執行役員規定や執行役員制度があり、組織図や業務分掌規程を備えている比較的規模の大きい会社での経験が必要です。


それでは、自分の会社にそういった経験者がいない場合は、どうすればよいのでしょうか?


自分の会社に経営業務管理責任者に該当する人がいないケースですね。

そういった場合は、経験者を招き入れるしか方法がありません。「身内」や「親せき」や「同業」や「友人」を頼って、要件を満たす人に取締役になってもらうのです。意外と、そういった方法で建設業許可を取得している会社は多いです。

たとえば、社長の知り合いの個人事業主経験者を取締役として登記をし、その人に経営業務管理責任者になってもらい建設業許可を取得するようなパターンです。古くから個人で建設業を営んでいたものの、高齢を理由に引退している知人に相談し、取締役に就任してもらうようなケースは、少なくありません。

また、他の会社での取締役の経験がある人を、自社の取締役に就任してもらい、建設業許可を取得することもできます。たとえば、他の建設会社で長年取締役の経験がある人に相談し、「役員報酬を払うので、自分の会社の取締役に就任して欲しい」と言って、経営業務管理責任者になってもらい、建設業許可を取得するケースです。このケースでは、実際に、他の建設会社で「5年以上、取締役をしていた経験」の証明が必要になりますが、「取締役としての5年以上の経験」は、自社での経験でなく、他社での経験でも問題ないことを覚えておいてください。

なお、他社での取締役の経験を利用して、建設業許可を取得することができるか否かについては、実際にあった相談内容を「相談事例のページ(※注)」で、再現していますので、興味のある人は、ぜひ、そちらもご覧いただければと思います。

(注)「他社での取締役の経験を利用して、建設業許可を取ることはできますか?」

最後に、人材派遣会社を頼るというケースも考えられます。人材派遣会社から、大手のゼネコンを退職した資格者や、建設会社の元経営者を紹介してもらう方法です。インターネットで検索すると、こういった人材派遣会社が検索結果にヒットします。マッチングがうまく行けば、人材派遣会社を頼りに、経営業務管理責任者の要件を満たす人を紹介してもらうのも1つの方法です。

ただし、「採用の条件・労働条件・報酬面」での折り合いが付かないと、なかなか、思ったような人材が見つからないと聞いたことがあります。また、建設業許可取得後も継続して、取締役に就任し続けてもらう必要があるので、一時的にスポットで紹介してもらうという考えだと、許可は取得できても、許可を維持することができない点に注意して頂きたいと思います。

「経営業務管理責任者の要件」が、うまく行かない人


「うまく行く人・うまく行く会社」と言うのは、「自分の会社だけでダメなら、何らかの形で外部から人材を登用する」という考えがあるように思います。


そうですね。どうしても建設業許可が必要であるという場合には、人材の採用の観点から、外部の経験者に取締役に就任してもらうことを考えた方がよさそうですね。

ここまでは、うまく行くケースを話してきましたが、残念ながらうまく行かないケースというのも存在します。

よくあるのが「自分は社長の右腕として会社の全般を切り盛りしてきた。だから、経管の要件を満たすはずだ。」というものです。しかし、これでは、何の証明にもなりません。「取締役であった」「執行役員であった」「令3条の使用人の経験がある」ということは、書類で証明できそうですが、「社長の右腕だった」ということは、書類で証明ができません。こういう人の場合、インタビューの冒頭で申し上げた(ア)(イ)(ウ)の条件に自分自身が該当するのか否かについて、よく考えてもらいたいと思います。

また、うまく行かないケースとして、他人の名義だけを借りてきて、経営業務管理責任者の要件を証明しようとするケースです。たとえば、知り合いの建設会社の社長に、自分の会社の経営業務管理責任者になってもらう場合などが、これにあたります。

より具体的に言うと、建設業許可を取りたいものの経営業務管理責任者の要件を証明できずに困っているD社長が、知り合いの建設会社のE社長に、D社の経管になってもらうように、お願いするケースです。この場合、E社長は、E社の代表取締役としてE社に常勤しているはずですから、D社に常勤することができません。そうすると仮にE社長が(イ)(ウ)の条件を満たしていたとしても(ア)の条件である「申請会社の常勤の取締役」を満たすことができません。

建設業許可を取得するには、建設業許可を取得したい会社の常勤の取締役の中に、経営業務管理責任者がいなければならないというのが、(ア)のルールです。E社長は、E社の代表取締役である以上、建設業許可を取得したい会社であるD社の「常勤」にはなれないので、(ア)の条件を満たすことができず、経営業務管理責任者になることはできないのです。

なお、仮にE社にE社長以外にもう一人F社長がいるというように、E社に2人の代表取締役がいるような場合が、まれにあります。そういった場合には、E社長がE社の非常勤代表取締役であることを証明することによって、E社長をD社の経営業務管理責任者にすることができます。ただし、非常にまれなケースであるので、もし気になる人がいれば、私がホームぺージ上にアップしている記事(※注)をお読みください。

(注)経営業務管理責任者が他社の代表取締役を兼ねている場合に取りうる3つの方法

「経営業務管理責任者の要件」を専門家に相談することの意味


なんとなく、「うまく行く人」と「うまく行かない人」の特徴が見えてきたような気がします。


ありがとうございます。

最後に強いて言うと、うまく行く人やうまく行く会社の特徴として、「私たちのような専門家への相談をするか否か」という点が挙げられるような気がします。

私も長年、建設業許可取得の手続きをサポートさせて頂いていて、特に東京都の建設業許可の取得手続きについては、かなりの実績があるほうだと思います。なので、会社の置かれている状況をヒアリングして、登記簿謄本を拝見すれば、だいたい「経営業務管理責任者の要件」を満たしているか否かを判断することはできます。

しかし、そういった専門家のアドバイスを受けないで、独自に手引きを読んで解釈しようとする人や、自分の思い込みで「できる・できない」を判断しようとする人も中には、いらっしゃいます。そういった努力や勉強熱心な部分は、とても評価されるべきことだと思うのですが、建設業許可取得のための「経営業務管理責任者の要件の充足」といった専門的な判断については、やはり専門家の意見を大事にするべきだと私は思うのです。

もちろん、専門家の言うことが「すべて正しい」というつもりは、毛頭ありませんし、専門家であったとしても、判断を間違うことはあります。しかし、1日でも早く建設業許可を取得したいと思うのであれば、やはり、1日でも早く私たちのような専門家に相談する機会を作ってもらう方がよいのかと思います。


専門家に相談することの重要性ですね。ありがとうございます。それでは、そろそろお時間になりましたので、最後にひとこと、お願いいたします。


はい。

建設業許可を取得するには、経営業務管理責任者の要件だけでなく、専任技術者の要件を満たすことも必要です。しかし、経営業務管理責任者の要件をクリアすることが、建設業許可取得のための大きな課題であり、その課題さえ乗り越えてしまえば、9割程度の確率で、建設業許可を取得できる見込みがあると言えるでしょう。

建設業許可の取得は、タイミングと準備次第で大きく結果が変わります。特に「経営業務管理責任者」の要件の証明は、自分では難しいと思っていても、私たちのような専門家の視点で見れば、許可取得の可能性があることも多いです。

建設業許可の取得は、会社の信用を高め、未来の仕事を切り拓く大きな一歩です。経営業務管理責任者の証明で悩んでいる方も多いですが、正しい準備と的確なサポートがあれば、必ず道は開けるはずです。このインタビュー記事が、経営業務管理責任者の要件で困っているみなさんの、力になれば幸いです。

ご相談の予約・お問い合わせ
  • 手続きに関する電話での無料相談は承っておりません。 質問や相談は、すべて事前予約制の有料相談をご案内させて頂きます。
お電話でのご相談の予約

「建設業許可のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日7:00-15:00(土日祝休み)
メールでのご相談の予約・お問い合わせ

    選択してください必須
    相談者1人1人への適切な対応、質の高い面談時間の確保の見地から、ご要望に応じて、1時間11.000円の有料相談を実施しています。

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

    行政書士法人スマートサイド(以下、「当社」という。)は,ユーザーの個人情報について以下のとおりプライバシーポリシー(以下、「本ポリシー」という。)を定めます。本ポリシーは、当社がどのような個人情報を取得し、どのように利用するか、ユーザーがどのようにご自身の個人情報を管理できるかをご説明するものです。

    【1.事業者情報】
    法人名:行政書士法人スマートサイド
    住所:東京都文京区小石川1-3-23 ル・ビジュー601
    代表者:横内 賢郎

    【2.個人情報の取得方法】
    当社はユーザーが利用登録をするとき、氏名・生年月日・住所・電話番号・メールアドレスなど個人を特定できる情報を取得させていただきます。
    お問い合わせフォームやコメントの送信時には、氏名・電話番号・メールアドレスを取得させていただきます。

    【3.個人情報の利用目的】
    取得した閲覧・購買履歴等の情報を分析し、ユーザー別に適した商品・サービスをお知らせするために利用します。また、取得した閲覧・購買履歴等の情報は、結果をスコア化した上で当該スコアを第三者へ提供します。

    【4.個人データを安全に管理するための措置】
    当社は個人情報を正確かつ最新の内容に保つよう努め、不正なアクセス・改ざん・漏えい・滅失及び毀損から保護するため全従業員及び役員に対して教育研修を実施しています。また、個人情報保護規程を設け、現場での管理についても定期的に点検を行っています。

    【5.個人データの第三者提供について】
    当社は法令及びガイドラインに別段の定めがある場合を除き、同意を得ないで第三者に個人情報を提供することは致しません。

    【6.保有個人データの開示、訂正】
    当社は本人から個人情報の開示を求められたときには、遅滞なく本人に対しこれを開示します。個人情報の利用目的の通知や訂正、追加、削除、利用の停止、第三者への提供の停止を希望される方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

    【7.個人情報取り扱いに関する相談や苦情の連絡先】
    当社の個人情報の取り扱いに関するご質問やご不明点、苦情、その他のお問い合わせはお問い合わせフォームよりご連絡ください。

    【8.SSL(Secure Socket Layer)について】
    当社のWebサイトはSSLに対応しており、WebブラウザとWebサーバーとの通信を暗号化しています。ユーザーが入力する氏名や住所、電話番号などの個人情報は自動的に暗号化されます。

    【9.cookieについて】
    cookieとは、WebサーバーからWebブラウザに送信されるデータのことです。Webサーバーがcookieを参照することでユーザーのパソコンを識別でき、効率的に当社Webサイトを利用することができます。当社Webサイトがcookieとして送るファイルは、個人を特定するような情報は含んでおりません。
    お使いのWebブラウザの設定により、cookieを無効にすることも可能です。

    【10.プライバシーポリシーの制定日及び改定日】
    制定:令和6年7月1日

    【11.免責事項】
    当社Webサイトに掲載されている情報の正確性には万全を期していますが、利用者が当社Webサイトの情報を用いて行う一切の行為に関して、一切の責任を負わないものとします。
    当社は、利用者が当社Webサイトを利用したことにより生じた利用者の損害及び利用者が第三者に与えた損害に関して、一切の責任を負わないものとします。

    【12.著作権・肖像権】
    当社Webサイト内の文章や画像、すべてのコンテンツは著作権・肖像権等により保護されています。無断での使用や転用は禁止されています。

    ページトップへ戻る